たまには独占欲





あいつはモテる。



今更こんな事いうのも癪だが、事実なので仕方がない。

怪盗キッドはいつも黄色い声援に囲まれてるし、クラスでもモテるらしい。

と、いうのも、バレンタインのチョコの量をみれば一目瞭然だ。




だから、たまたま町で出くわしたって、

それが女の子連れで歩いてたからって、

別に驚く事じゃないわけだが。





そんなわけで、俺は今非常に機嫌が悪い。











真夏の日差しが照りつける中。
俺は本屋へとのろのろと歩いていた。

ただでさえ不規則な生活でだるいのに、小学生の身体には尚のことつらい。


理由は例によってというか、今日発売の推理小説。
涼しいうちに出かければよかったのだが、昨日ほぼ徹夜して起きてみれば午後1時。

夕方まで待つつもりでいたが、読みたさに堪えきれず家を出た。


が、これはかなり失敗だったかもしれない。


暑い、真夏なのだから当然だが、とにかく暑い。
しかも、町中で人が多いためさらに暑い。
人って本当に暖かいんだ〜等と現実逃避を始めるが、それも無駄だった。

なんでこんな暑いのに人が多いんだ、と毒づくが人の事は言えない。



そんな中、やっと書店にたどり着いた。
さっさとクーラーの効いた店内に入ろうとして、思いがけない人物を見つけた。

デパートの出口にいる、癖のある黒髪の頭。

不本意な出逢い方をしながらも、現在では恋人とか呼ばれるようになった男。
そこに行き着くまでに、快斗の涙涙の努力があったことは言うまでもない。


何してるんだ、あいつ、あんなところで。


休日とあらば、朝から毛利家に押し掛けてきた奴が今日は来ていなかった。

まぁ、何か用事でもあったのだろうと思い特に気にしていなかったのだが。


涼しいデパート(重要)でデートとは良いご身分だな……!


見える人間には、コナンの背中に禍々しいものが見えただろう。
それも超強力な。

一応気になって、コナンが近づいてみると隣の人物と話していることがわかる。
見つけてしまったために、無視するのも気が引けたので声を掛けようとする。

人混みが邪魔でなかなか前に進めない。
こういう時、小さな身体に不満を感じるが最近では諦めた。

その間も、快斗は立ったまま会話を続けている。

よくよく観察すると、隣にいるのは女性のようだ。
長い黒髪がなびいている。

コナンはむっとしつつも、やっとの事で人混みを抜けた。


「コナン!」

ため息を付いていると、斜め上から声を掛けられた。
むっとさせた張本人がそこにいる。

「よぉ、快斗」
「どうしたのこんなところで?でも、やっぱりあれだよね!
こんな広いところで逢うなんてやっぱり運命だよね!!」

質問しておきながら、勝手にしゃべり続ける快斗にコナンの機嫌は些か下降する。

「お前こそ何してるんだよ、こんなところで」
「俺?俺は買い物だよ。今からコナンちゃんとこに行こうと思ってたんだ!」
「……後ろの人はいいのか?」

そう言うと、快斗はあっと声を上げた。
……忘れてたな。

「私にも、是非彼の事を紹介していただけないかしら?黒羽君」

やはり女性のようだ。
それどころか結構な美人…だと思う。
何分、コナンはこういう所にずば抜けて疎い。


「初めまして、私は小泉紅子よ」
「あ…初めまして」

条件反射的にそう返してしまうが、彼女は一体なにものだろう。
私服なため(休日だから当然だが)学校もわからない。
おそらく年は同じくらい…もちろん新一とだ。


確かに美人だが、この妖しい微笑みは何処かで見た事あるような……。

「紅子、お前まだいたのか?」
「あら、失礼ね」

とても失礼とは思っていなさそうな表情だ。
この読めない表情といい、快斗との会話といい、コナンの機嫌を上昇させる事はない。

「それよりも…私は彼に興味があるの、光の魔人にね」

……今、なんか聞き慣れない言葉を耳にした。
光の……なんだって?それは俺のことなのか?

快斗が何やら講義しているが、それらもあまり耳に入ってこない。

2人はおそらく高校生で、同世代で。
どこからどう見ても、美男美女カップルだ。

コナンは本屋へ行こうと、後ろを向いた。

その瞬間に快斗に抱き上げられた。

「何処行くの?俺も行くよv」
「……お前はなんか用事があるんだろ」
「終わったよ、一緒にいこv」
「その人だっているし」
「あーいいって別に、今たまたまあっただけだし」

と、なんとも失礼な事をいいつつ、快斗は紅子に背を向けた。

「あら、せっかく貴方とお近づきになれるチャンスだったのに、もう行ってしまうの?」

相変わらずの笑みで彼女は言った。
どこか背筋に寒気が奔る話し方だ。

「コナンは俺のなんだよ。手、出されちゃ困るからな」

コナンちゃん可愛いからvv等といいつつ、快斗はデパートから離れていった。
コナンが振り返った時、彼女はもうそこにいなかった。


「それで、何処行くのコナンちゃん」
「あ……本屋に用があったんだよ。っていい加減おろせ!」
「えぇ〜やだよ〜v」

快斗はでれでれと笑顔を振りまいている。
コナンを白昼堂々、腕に抱けるようになったのでさえ最近だ。

「ねぇ、それはそうとコナンちゃんv」
「……何だ。ちゃん付けはやめろ、それと降ろせ」

もう抵抗する気力もないらしく、コナンは大人しく腕におさまっている。
そんなコナンを快斗が降ろすわけもなく、そのまま歩き続けた。

「さっき、もしかして妬いてた?」
「!?」
「あ、やっぱりそうなんだv嬉しい〜〜!」
「別に、そういうわけじゃ……!」
「照れない照れないvv」
「〜〜!」
「嬉しいってvv」
「……うっせ」

コナンはふてくされたようにそっぽを向いた。

「俺への愛だね!」
「だから、違うって……!」
「はいはいvでも、ごめんね次から気をつけるよv」
「……別にいい…結構、嬉しかったし……」

コナンは呟くようにそう言った。

「??ゴメン、よく聞こえなかった」
「…なんでもねぇよ」

そっぽを向いたまま、コナンは笑みを浮かべた。
快斗が何度も聞いてくるが、悔しいのでもう言ってやらない。

「教えてよ〜」
「嫌だ」
「けち〜」

そんな会話をしながら、2人は本屋へ入っていった。















++おまけ++




その後、本を買うと黒羽家へ行った。



「ちょっと待っててね」

そういうと、快斗はキッチンへ消えていった。
黒羽家には何度か来た事がある。
快斗の母親にも来るたびにあったが、コナンを気に入ってくれている。

どうやら今日は出かけているようだが。

コナンは2人きりなので口調を気にする事もなく、ソファでくつろぐ。
クーラーの効いた部屋は涼しい。



疲れていたのか、どうやらうたた寝してしまったようだ。
身体にはおそらく快斗が持ってきたであろう、薄手の毛布が掛けてあった。

「あ、コナンちゃんおはようvv」
「……おはよ…」

コナンは目を擦ると、キッチンから顔を出した快斗を見た。

「俺、どのくらい寝てた?」
「ん〜1時間くらいかな」
「そうか…悪かったな」
「いいよ、コナンの寝顔も堪能出来たしv」

コナンは僅かに頬を紅く染める。

「これも出来たしねv」
「?」

快斗はテーブルの上に、お皿とスプーンを運んできた。
皿の上には、涼しげなゼリーのかかったアイスがのっている。

「これは…?」
「バニラアイスのコーヒービュレ添えでございます」

役者がかった口調でそう言うと、コナンの前に置いた。

「これの材料買いに行ってたんだよv
コナンちゃんアイスコーヒーばっかり飲むんだもん、胃が悪くなるよ」

快斗は人懐こい笑みを浮かべながらそう言う。

「召し上がれ♪」
「ありがと…いただきます」

コナンはスプーンですくって口に運ぶ。
その様子を快斗はじっと眺めていた。

「おいしい」
「本当?よかったv」

満開の笑顔の快斗は、自分の分に手をつける。
コナンも自然とそれに手が伸びる。

と、突然コナンの手が止まった。

「あっ!!」
「!?なに?何事コナンちゃん!?」

快斗は思わずアイスを噴き出しそうになる。
咳き込みながら、コナンに尋ねるとコナンはどこか明後日の方を向いていた。

「そうか…わかった……誰かに似てると思ったら……」
「?」
「灰原だ!」
「???」

快斗の周りには多くの?マークが飛んでいる。
そんな事はおかまいなしに、コナンは一人で納得していた。








fin




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