邂逅





江戸川コナン

帝丹小学校1年

現在、毛利小五郎宅に居候

両親は海外へ出張中との事





快斗は、自室で頭を抱えていた。
それは他ならぬ、ある人物の存在。
あの暗号を見事に解き、怪盗キッドを追いつめてみせた。

おかげでひいた風邪は完治しているが、彼の事が気になって仕方がない。

そう思い調べ始めたが、これ以上の情報が全く出てこない。

経歴もわからなければ、自宅も両親もわからない。



一言でいうなら謎だ。



全く、こんなものでよく小学校など通えるな、と感心する。
もしかすると、キッドと同じほど謎なのではないだろうか。


彼はただ者ではない。
あの洞察力、行動力、その他諸々ももちろんそうだが、
何より快斗の、キッドどしての勘がそう言っていた。


たかが子供と思っていたが、そんなに簡単にすませられはしなかった。


快斗は学ランを脱ぐと、手早く私服を着る。
簡単な変装道具を持つと、自室を後にした。











子供達が口々に別れの挨拶をし、各々の方向へ帰っていく。

彼、江戸川コナンもこの小学校へ通う一人だ。
と言っても、見た目が小学生なだけで、中身は高校生なわけだが。

コナンはいつものメンバー、5人と帰路を共にしていた。
他愛もない会話をしながら道を歩く。

この子供達との会話はコナンを楽しませた。


いつもの帰り道を歩いていくと、コナンは違和感に気がついた。

「なぁ…灰原」

隣の少女に話しかける。
茶髪の綺麗な顔をした少女だ。

「何、江戸川君?」
「視線……感じねーか?」
「視線?」

小声で言われ、哀は声を落とした。

「何も感じないけど?」
「……そうか、ならいいんだ」

コナンは恐らく取り越し苦労であろうと思った。
髪をばさばさと掻き乱し、勘が鈍ったものだとため息をつく。

「でも……尾けられてるのは確かのようね」
「!」

そういうと哀は前方のショウウィンドウを示す。
そこに一瞬、黒い人影が映り、すぐに消えた。

「まだ、いやがったのか……」
「学校からずっとみたいね」

コナンはああ、と頷いた。

「まぁ、でもお前が視線を感じないって事は狙いは俺みたいだな」
「ちょっと、何する気なの!?」
「危ねー事はしないって、たぶん奴らじゃないしな」

二人のやりとりで、奴らは常に黒の組織を指す。
静かに交わされる会話は、傍にいる子供達にも聞こえていないだろう。

「そんな確証ないでしょ!?」
「大丈夫だって、殺気じゃねーから!」

それに……と、コナンは呟くように言った。

「心当たりがあるんだ…この感じには」
「え?」

そう言うと、コナンは普段と違う道を曲がる。

「ちょっと……!」
「じゃ、俺、用事あるから!お前ら気をつけて帰れよっ」

そう言いながら、コナンは走っていった。
子供達は不思議そうに、彼を見つめていた。

哀はしばし、追うかどうか迷った。
しかし、彼の実力は彼女も知るところだ。

今回は彼を信じる事にし、哀は阿笠邸への道を帰り始めた。








コナンは少年探偵団の姿が見えなくなると、再びゆっくりと歩き始めた。

未だに視線は離れようとしない。
尾行している人物は、どうやら相当慣れているようだ。

コナンは半ば感心しながら進んでいった。


高層ビルが建ち並ぶ都心から、少し離れた場所。
人通りは少ないが、皆無というわけでもなかった。

コナンはいきなり止まると、後ろを振り返った。


「出て来いよ」


こちら側の歩道には誰もいない。
それでも、コナンは確かな手応えを感じていた。

僅かだが、反応した気配。


「やっぱり、気付いてたのか」


曲がり角から、一つの人影が現れる。

まだ青年と呼べるような出で立ちだった。
薄い黒のラフなジーンズに、黒いTシャツ。
何処にでもいる、男子高校生といった感じである。
ただ、整った綺麗な顔をしていた。

「当たり前だろ。で、俺に何の用だ?」

コナンはじっくりと観察する。
隙のない身のこなし、鋭い視線、一瞥してただものではない事が解る。

「まぁ、そう警戒するなよ。お前を傷つけるつもりはない」

青年は両手を顔の横に挙げ、軽く頭を振る。
もちろんそんな事で、コナンの注意がとかれる事はないが。

「てめー、何者だ?さっきの尾行は素人ってわけじゃないだろ、俺に何の用がある」

コナンは一層視線を厳しくした。
青年の方も、手を下ろすと一歩前に踏み出した。

「本当に、お解りになりませんか?名探偵」

両手を軽く広げ、軽く会釈をする。
その態度に、コナンは軽く目を見開いた。

「キッド……!?」
「ご名答」

キッドはいつもの余裕ある笑みを浮かべる。
その様子は、まさしく怪盗キッドそのものだった。

「……っ…その怪盗キッドがなんの用だよ、そんな格好で昼間に」

キッドは少し考え込むように、顎に手を添えた。

「貴方にあいたかった…と、いうのでは理由不足ですか?」
「当然だな」

俺は、探偵だぜ?と続ける。
それをキッドは挑発的な笑みで受け流した。

「そうですね……なら貴方について知りたかった、というのではどうでしょう」
「……それが狙いか」

キッドは満足そうに笑みを浮かべる。
同時にやはりただ者ではないと確信する。

「…俺には関わらないほうが身の為だぜ?」
「……何故です?」

一瞬コナンの顔が曇る。
それをキッドが見逃すはずがなかった。

「理由を、お教え願いたい。……何故貴方は……」
「俺について、何も知るな。そして関わるな」

コナンはそう言うと踵を返した。
キッドは慌ててコナンの後を追う。

「名探偵!」

キッドの呼びかけに、コナンは一度だけ振り返り進みはじめた。
キッドも後を追う。
相手は小学生だ、追いつけないはずがない。

まっすぐ道を進むのだろうと思っていたが、思わぬ所で彼は曲がった。

「……警察署になんて寄らないでくださいよ」
「そのために、わざわざここまで来たんだろうが」

そういうと、コナンは何食わぬ顔で警察署へ入っていった。
キッドは仕方がない、とため息をつく。

「絶対に、諦めないからな」

その言葉が彼に聞こえていたかどうかは、定かではない。







快斗は、重い足取りで帰路に就いていた。

「手強いな〜……」

空を仰ぎ、ため息をつく。

やはりというか、ただの小学生ではない。
あの、身のこなしといい、頭の良さといい、とても小学1年生のそれではなかった。

それよりも、あの言葉の意味が気にかかる。

関わるな…と彼は言った。
それは、ただ犯罪者である自分に付きまとわれるのが嫌なのだろうか。

「奥が深いね……」

快斗は拳を握る。

関わるな、と彼の澄んだ声が頭の中で反響する。

「やだね」

快斗は立ち止まると、じっと前をみつめた。

「絶対に、諦めてなんかやらない……必ず手に入れてみせる」

彼は再び歩き始めた。








fin




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