平穏で幸福な日常





「コナンちゃん、お昼出来たよ〜vv」

その声にコナンは分厚い本から顔を上げた。
気がつけば確かにもう昼食時だ。

しかし彼は時間どころか、来訪者の存在さえも忘れていたのだった。





「快斗、おめーまだいたのか?」

コナンは書庫からダイニングへ来た。
テーブルの上には見た目の鮮やかな食事が置かれている。

視線の先にはその料理を作った張本人が、悲しそうな顔で座っていた。

「酷いよ、コナンちゃん…俺はずーっといたのに……」

今朝方こいつが家に来た事は覚えている。
しかし、久しぶりに実家に帰って本を読んでいるところだったのだ。
面倒だったのでいつものごとく放っておいた。
そうすると最初のうちはちょっかいをかけてきたが、しばらくするとそれは無くなった。

「何してたのかと思ったら飯作ってたのか」
「うんvだってこのままだったらコナンちゃんはご飯食べないでしょ」

哀ちゃんにも頼まれたし、とすでに笑顔を取り戻した男は言う。
コナンの生活習慣は、隣の科学者に呆れられるほどだ。

コナンも確かに空腹を感じていたので、テーブルについた。









食事を終え、片づけもすんだので2人はリビングでくつろいでいた。

ソファに座り、コナンは先ほどの本をまだ読んでいる。
快斗もその隣に腰掛けていた。

「ねぇ、コナンちゃん」
「ん〜?」

快斗の問いかけにコナンは生返事を返す。
それでも快斗は、反応を示してくれた事に純粋に喜びを感じた。

先ほどの食事で機嫌が良くなったらしい。
まるで餌付けをしているようだと、快斗は思った。

「何読んでるの?」
「……『生物学と解剖学〜見た目でわかるヒトの内部〜』」
「……………」
「灰原から借りたんだ」

結構おもしろいぜ?と屈託のない笑みを浮かべる。
一方快斗は引きつった笑みを浮かべていた。




さすが哀ちゃん




快斗は心の中で、この世で最も恐ろしいものに含まれる彼女に平伏した。
彼女が世にも恐ろしい人物である事は、コナンも認めるところだ。


コナンはまた読書に没頭していた。
小さな身体にその本は重たいだろうと思う。


ふと外を見ると明るい日差しが降り注いでいた。
最近続いていた雨を思わせないほど良い天気だ。


快斗は思いついたように手を打った。


「コナンちゃん!」
「……なんだ?」
「散歩に行こうっ」
「嫌だ」


コナンは本から視線を反らさずに答えた。
快斗は大げさなジェスチャーで落胆を表現する。

「…酷い……もうちょっと考えてくれたって……」
「せっかく落ち着いて本が読めるのに、なんでわざわざ散歩に行くんだよ」

間髪入れずに返答が返ってくる。

「せっかくいい天気なのに……」

しかし快斗はそれ以上の事を言わず、コナンを見つめた。

「!!」

次の瞬間には、コナンは快斗の膝の上に乗せられていた。

コナンは只でさえ軽いのだ。
その身体をキッドとして鍛えている快斗が、抱えられない筈はない。

「快斗っ!てめ何しやがる!」
「何って……いいじゃん、このくらいv」

そういって後ろからコナンの細い身体に抱きつく。
コナンは最初は抵抗していたものの、面倒になったのかすぐに止めた。







それは例えば平穏で幸福な日常。
















fin



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