Forever




「ネス…起きてる?」


天井に備えられた窓から、月明かりが差し込んでいる。

森の中に造られた、決して広いとはいえない小屋。
その一室のこの家の主の寝室。

白いシーツに覆われた寝台に、2つの人影があった。


「…ああ」


マグナは裸身のままの上半身を起こす。

隣には、すでに歳が追いついてしまった兄弟子がいる。
怠さが抜けないといった様子で、枕を抱え俯せている。


禁忌の森と呼ばれる此処には、滅多に人は入らない。

辺りには、静かな木々のざわめきだけが響いている。


「……ホント夢みたい」


マグナは人懐こい笑みを浮かべる。
その様子を見て、ネスティの口元にも自然と笑みが浮かぶ。


「夢であってもらっては困るんだが」


苦笑を漏らしつつ、ベッドサイドのランプに灯をともす。
暖かい光が部屋の中を照らした。


「……そうだね」


そう言うとマグナはネスティにそっと口付ける。
ネスティも瞳を閉じそれを傍受する。


「もう、二度と逢えないと思ってた」


笑みを浮かべていても、どこか泣き出しそうな声音。
お互いの吐息が感じられるほどの距離で、マグナはネスティを見つめていた。


「……約束しただろう?必ず、帰ってくると」


ネスティはくすりと笑みを零す。


「君と違って、約束は守るんでね」


皮肉めいた、それでいて子供をあやすような口調。
しかし、それを聞いてもマグナはネスティを見つめたままだった。

いつもなら、すぐにでもシーツに潜り込んで寝てしまうのに。
ネスティは不審感を募らせる。


「マグナ?」
「じゃあ、約束して……」


ネスティはマグナを見上げる。
そこには未だかつて見た事無いほど真剣な、蒼い双眼があった。


「約束?」


そう問い返すと、マグナはゆっくりと頷いた。


「もう二度と俺の側を離れないで」


そではまるで駄々を捏ねる子供のようにも思えた。

しかし、ネスティにはマグナの言わんとする事は十分に理解している。


「あの時みたいに、俺を置いていかないで」


そう言って息を詰めて返答を待つマグナに、ネスティはため息を付いた。


「……当然、そのつもりだよ」


そう言ってマグナを引き寄せ口付ける。
離れるとマグナが目を丸くしているのがわかった。


「驚くほどの事でもないだろう」
「……いや、そんなにあっさり答えてくれると思わなくてさ」


困惑と照れで頬を紅く染め、マグナはネスティを抱きしめた。


「もう離さない」


そう言って、ネスティの肩口に顔を埋める。


「そうだな……どうやらライルの一族はどうしても、クレスメントと離れる事が出来ないらしい」


ネスティもマグナの背に腕を回す。









もう二度と、失ったりしない









fin



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