幸あれ








紅い髪の大剣使い………

「そうなんですよ!素人じゃないですよあれは。型が帝国の軍人のもので……」

召喚術も使っていたのか?

「ええ、そりゃもう。使いこなしてたって感じでした。」

ほう、なるほど……で、おめおめ逃げ帰ってきたと。

「それは……っ!でも、本当に強かったんです!」

当然だ……

「は……?」

奴は……

「…」
「隊長、お知り合いで?」

……いや、わからぬ。
だがビジュの話によると、剣を使いこなすあげく、召喚術の連発。
それでいて、絶妙な人員配置と的確な戦況の判断。
その海賊を指揮していたのも奴なのだろう。

「ええ、おそらくは……。」

…ならば、相当の実力者
気を抜くな。

「はっ!」















「はなせよっ!」
「ガキか……痛めつければすぐに吐きますぜ、奴らのことなんざ」

やめろビジュ。
その手を離してやれ。

「チッ!」
「!」

逃げようとしても無駄だ。
子供の脚ではこの数の軍隊からは逃げ切れぬ。

「……」

では、聞こう……
お前、名は?

「……」

……あの海賊一味の仲間か?

「……」

一体どうして此処にいる?

「……」

この島には何がある?

「……」

………お前らが呼んでいる『先生』とは何者だ

「!!」

「おいガキ、いい加減にしろよ!!」
「やめろビジュ!相手は子供だ!!」

その『先生』とやらの名は。

「教えたくないね!」

まぁ、よかろう。お前の勉学の師か、それとも剣の師か。

「両方だよっ」

なるほど……その者は……
戯れ言ばかりを抜かし、本気でそれを信じている
そのくせ、それに見合う力を持っている所が憎たらしい
剣も使えるくせに、召喚術も完璧な、嫌みなくらいお人好しな奴か?

「…なんで…!?」

……やはり、か

「隊長、お知り合いですか?」

……おそらくは、な。
で、奴は今どこにいる?

「言わない!」
「このガキ……!」
「止めろビジュ!相手は子供だぞ!」
「副隊長どのはそうおっしゃいますがねぇ。答えない以上は身体に聞くしかないでしょう」

いや、その必要はない。
あの者は必ず子供を助けにやってくる。
……私の知るあの者ならばな。


「ナップ!?」



「……向こう見ずなのは学生の頃とちっともかわらんな……レックス。」




久しぶりに見た彼は
どことなく昔と違っていた。

紅い髪を振り乱し、一心にこの子供の事を考えているのだろうが。

そこはまるで変わらないのに。




その矛盾が怒りを掻き立て、気を荒立てる。



黙って引き下がっていれば良いものを。

下手に抵抗し傷を負うのはお前なのだぞ。




そこまで、あの子供が大事か。
まあ、相変わらずだがな。

優しすぎるお前だからこそ。


「総員、ビジュを援護!」


何故、違う……
真実を、知りたい……



何故……







++++++++++++++++++++++++++++++++++




戦闘の後の奇妙な静けさが流れる。


やはり、あの部下では奴には適わなかったか……
いくら海賊とは言え腕の達者なものたちだ。


しかし、あの剣が……

あの剣を持っているのならば、決して馴れ合えはできぬ、か……






………!





なんだ……視線?

また随分と痛いな、一体誰が……。






紅紫の髪
白い肌
細い線
整った顔






あれは海賊一味の短剣使い……
随分と頭の切れる男だと思ったが。





ほう……


表面は冷たくとも、なかは激情に溢れているというのか。

おもしろい


……?
何……?








…………ワタサナイ








ふ……
いい度胸だ。

ならば私も挑発の笑みで受けよう。

そんな言葉は無駄だという事を知るがいい。




奴を変えたのは貴様だ





私には出来なかった……

彼を救ってやる事は出来なかった……







本気なのだろうな








「うるさいっ!二度と気安く私の名を呼ぶな!!」


そう言って踵を返そう

これでいい

忘れるがいい




紫の御仁

任せるよ……












紅き獅子と紫の刃に




幸あれ










fin



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