今年も億劫な日々が続いている
つまらない日々

またあの日がやってくるのに
きっとこの日々は続いていく






All things are your sake.






夜更け、三日月が頂点をすぎ星が瞬き始めた頃。

ハリーはいつものようにこの空を眺めていた。
すでに日課となりつつあるこれ。
星空を見上げてもう何度目かになるため息をついた。

鉄格子のはめられた窓枠は、あの叔父の手によるもの。
窓を精一杯開き、肘をついて両の手のひらで頭を支える。

あと半刻ほどで時計が、今日という日の終わりを告げようとしていた。

ハリーはただただ空を見上げる。
何をするでもなくただひたすら。

しばらくすると、だんだんと近づく白い影が見えた。
しかしよく見ると、そのそばにもう2羽の影があるのがわかる。
ハリーは横によけて3羽の入れる道をつくった。
鉄の柵の間には梟なら通れるほどの隙間がある。

3羽は苦労しながらそこをすり抜けた。
小さな梟が興奮して騒ぎだそうとするのを、慌ててなだめる。
こんなところで騒がれては、隣の従兄弟が目を覚ましかねない。

3羽ともたくさんの荷物を運んできてくれた。
どれも皆、嬉しい誕生日プレゼント。

やっとのことで、すべてをベッドの上に置くとちょうど壁時計が12時を告げた。

「Happy Birthday. Harry」

静かに少年はそう呟く。
プレゼントの山に目を向けると思わず微笑みがこぼれる。

ハリーはひとつひとつ包みを開き始めた。

ハーマイオニーやロン、シリウスからのプレゼント。
それぞれとても個性がよく現れている。

少し休むと、ヘドウィグ以外の2羽は飛び立っていった。
足にはお礼の手紙をくくりつけて。




たくさんの贈り物。
当然嬉しかった。


でも

足りない



本当に欲しい人からのものは無かったから。
本当に会いたい人に会えなかったから。



虚しく秒針が時を刻んでいる。
もっと早く針が進んで、さっさと学校が始まってしまえばいいのに。


そうすれば会えるのに。


再び空を仰ぐ。
もう月は沈み始めていた。

心なしか暗くなった空。
それ故にいっそう星が瞬いて見える。

薄暗い部屋の中で、ハリーはただひたすら空を眺め続けた。



「あ。」

ハリーは思わず声を漏らした。

目を開いて食い入るように空を見上げる。


1つ、また1つ。


星が流れていった。

美しく尾を引いては消えていく。
ハリーはぽかんとしたままその幻想的な光景を眺めていた。





『ペルセウス座流星群?』
『ああ、毎年夏に見える流れ星の集団だ。』
『へぇ…そんなのがあるんですか。』
『少しはその無知をなんとかしたまえ。』
『先生が物知りすぎなだけでしょう。第一先生が天文学に興味があっただなんて思いもしませんでした。』
『興味などない。ただ、それが見えるのが7月下旬………』
『7月がなんですか?』
『……なんでもない』





夏休み直前のそんな会話を思い出し、ふと微笑みがうかぶ。

ハリーは両腕を窓枠に置き、その上に顎を乗せた。
そのまま空をじっと眺める。

不思議と心は穏やかだった。
この星空の下には必ずあの人がいるのだという安堵感があった。


もう大丈夫

これはあの人からの誕生日プレゼントなのだろうか。


無愛想で皮肉屋で
でも不器用で、本当は優しい人の



不思議な安心感につつまれると静かな眠気が襲ってくる。
それに身を委ね、瞼を閉じた。


またひとつ星が流れる。




哀しむ必要はないのだ、と
嘆く必要はないのだ、と




すぐにまた逢えるから……





Fin



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